被災者のためにデザインができること

 少々時間を遡ってしまいますが、クリティカルデザインラボがNPO団体Architecture for Humanityとの恊働で昨年度から今年度初めにかけて行った震災復興プロジェクトのご報告です。
(関連ブログはこちらをクリック

 クリラボメンバーは宮城県南三陸町志津川の漁師グループとのやり取りから、彼らの作業場であり新しいビジネス拠点として復興の後押しとなる「番屋」の使い方の提案をし、番屋内で使用する家具の製作を行いました。記事はプロジェクトの一区切りとなった現地での家具製作の模様とメンバーからのレポートです。


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 11月からスタートしたナサニエル・コラムさんを交えた東日本大震災復興建築プロジェクトへの下準備を終え、11月、2月の2度の宮城県南三陸町のリサーチをし、いよいよ現地に向かって作業をしてきました。
 今回私たちクリティカルデザインラボは、漁師さん同士のコミュニケーションの場であり、漁業作業を行う場所をデザインするという目的を掲げ、宮城県南三陸町に向かい、漁師さんたちが作業場で使う家具制作を3月26日から31日の5日間行いました。

机、イス、ベット、棚などの制作にあたり、オープンソース化された設計図をもとにして、漁師さんたちの要望にあわせて改良し制作しました。


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2月下旬の現地リサーチで、サンプルの机、椅子を南三陸に持っていき、漁師さんたちに実際に座ってもらった上で、作業しやすい高さなどの微調整で改変された図案につくり変えた

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作業風景

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木材のずれた角度を直している

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お昼休憩

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完成した直後、ベットの使い心地を漁師さんに試してもらう

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渡した机が早速作業場で使われていた


プロジェクトを振り返ってメンバー二人からのレポートを紹介します。


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環境デザイン学科 建築コース1回  嶋崎迅
  まず、今回、長期にわたり、復興支援という形で、宮城県南三陸町志津川に赴き、被災された方々や漁師さんと交流しお手伝いできたことは、自分にとって、とてもいい経験になりました。京都造形で環境デザイン、建築を学ぶ学生という視点から見ても、リアルワークの現場、クライアントとのコミュニケーションから震災後の建築の在り方など、考えることや、学ぶことがたくさんありました。こういった経験は、ただ、ボランティアとして被災地に訪れ、お手伝いするということだけでは得られない、デザイナーとしての現場であると、感じました。 実際に漁師さんが作業する隣で製作することが出来たので、入れ替わり浜から 帰ってくる漁師さんとも、コミュニケーションをとりながら制作できました。毎度のこと声をかけてくれる漁師さんや、気遣ってワカメやタコなどのとれたての海産物をくれた方もいました。  製作が進む中、完成に近づいた製作物に触れてもらい、その場でコメントをいただくことが出来、それによって、人のために、何かをつくるということの最も大切なコミュニケーションを学んでいるということを実感 しました。ただつくって渡すだけではなく、製作過程から、クライアントに見てもらい、コミュニケーション をとることで、よりニーズにも近づけることが出来るし、愛着や思い出のひとつにもなるということを、肌で感じました。  建設予定中の番屋自体が完成した後、今回製作したものが、どのように使われているか、また、うまく使われているのか、改良が必要なのか、ということも含め、今後も継続的に連絡を取りたいです。この行為に、 今必要とされているデザインの本質があるのではないかと僕は思っています。


情報デザイン学科 コミュニケーションデザインコース 3 回 村尾雄太
 わたしが今回のプロジェクトを終えて感じたことは漁師さんたちとの「心のつながり」でした。 今回被災地を三度訪れ、ユーザーリサーチから空間の使い方の検証、実際の家具制作までを通して、わたしはデザインが行われそれをエンドユーザーが実際に使用するまでの過程を経験しました。そんな経験を経て、 わたしはどの工程においても実際の使用者である漁師さんとの深いコミュニケーションが必要であるということを痛感しました。深いコミュニケーションとは言い換えるならば「心のつながり」です。 わたしはいままでデザイナーとはただ良いものを作ることができればいい、と考えていました。しかしこのプロジェクトを通してわたしはいかに自分の考えが未熟なものであったかを学びました。デザイナーに必要なのはセンスや技術だけではない。人と心を通わすことのできる「人間力」なんだ、と今わたしは思っています。 はじめは僅かながらも警戒心を抱いて私たち学生に接していた漁師さんたちがコミュニケーションを通じていくうちに徐々に私たちを受け入れてくれるようになったという実感がわたしには確かにあります。そうして漁師さんたちと深い絆を築くことが出来ました。その結果、本当に漁師さんたちが使いやすい家具を作ることが出来たのだと思っています。これは現地へ行き漁師さんたちとリアルな関係を築かなければできないことであり、本当の復興支援とはこういうことなんだとわたしは思います。 南三陸町から帰ってきたわたしは本当の復興支援をしたんだという充実感でいっぱいです。そして自分が大学で学ぶ専門分野でそれが出来たことをほんとうに嬉しく思っています。

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長期にわたったこのプロジェクトは一旦終わりましたが、メンバーの全員がまた南三陸を訪れたいと考えています。家具たちは果たして漁師さんたちの役に立っているのかどうか、これからどうやって使われていくのか、そんな想いを持つことができ、これからのデザインの在り方を自分で実感することができたプロジェクトとなりました。
この経験はそれぞれ各学生のこれからの制作や進路への糧になると確信しています。

情報デザイン学科 コミュニケーションデザインコース 2回 横山佳穂


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相手や目的のためのデザインの現場を復興支援というかたちで経験できたことは、真にデザインやものづくりとは何かということを考えるきっかけになったのだと思います。
今後も継続して関わっていくとのこと、進展あればまたこちらのブログでもお知らせします。

さて、クリティカルデザインラボでは現在「働く人のイス」をテーマに家具のデザインと製作を行うプロジェクトを行っています。こちらの製作の様子もまたお伝えいたしますね!

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